今回は、「アトリエブルジョン」と言う屋号が生まれるきっかけとなったエピソードを紹介します。

屋号を何にしようか考え始めたのは、2015年の秋でした。

フランスでも日本でも親近感の湧くような名前を付けたいと思っていた私は、

《どちらの国の人にも発音しやすく、シンプルで、アトリエのイメージに合うもの》という三点を軸に、とにかく何か思い付いたら片っ端からメモメモ。時には書き溜めた言葉を並べ替えて語呂合わせにも挑戦しましたが、散々こねくり回した末に何だか得体の知れない言葉がたくさん生まれ、しっくりこないまま結局全部リセット(うぎゃぁー)なんてのがオチでした。突きつけられる発想力の乏しさといったら、もう涙もの。果たして涙の数だけ強くなれるんでしょうか、真夜さん(岡本)…。

良いネーミングが見つからないまま季節は冬となり、私とパートナーはお正月休みで日本へ。「フランスに帰る前に絶対良い名前を見つけてやるわ」と心に誓った私は、数日間岐阜の実家に籠って昼間からあーでもないこーでもないとウンウン考えていました。

そして、唸り続けるままに迎えた夕暮れ時。ずっと座りっぱなしでもいかんなと思い、グイッと身体をひねって真後ろに目を向けた瞬間。視界に飛び込んできたのが

コレ(矢印の先)。

…ちっちゃ! 前方に佇む抹茶茶碗がメインみたいになってますが、私が見たのは一番後ろの方に見える小さくて紅い実でした。近くで見るとこんな感じ↓

この、小さくてさりげないのに存在感バッチリな紅に一瞬で心をワシ掴みにされた私は

「これ、ちょっと花の蕾みたいよね。……そういえばフランス語で蕾ってどう言うんやったっけ」

と、なぜか興味が蕾の仏語訳に移行。早速Google先生に聞いてみると、“ぶるじょん” というまぁ良い響きの語ではありませんか。

しかも「蕾」って、これから何かが始まるワクワク感があってポジティブ。私たちの服を誰かが着ると、その人にしかない華が咲いて、そこからまた新しい物語がはじまるみたいな。毎日のお洒落のお供に、気づけばちょこんと側にいるイメージで。どう!?

というような感じで調子よく話していると、今まで散々渋い顔をしてきた相方もついに良い反応が。フランスに同じ名前の会社が無いかどうかチェックし、その後やっと、やっと!

名前決定ーーーーーーーーーーっっっっ!!うおぉぉぉおおおっ!

というわけで、私の何気ない体ねじりと紅い実をきっかけに「アトリエブルジョン」という名前がひねり出されたのでした。

ちなみにその後、紅い実の正体は南天(ナンテン)と発覚。しかもこの実は「難転(難を転ずる)」とも言われ、古くから縁起物として親しまれているそうです。

母:「南天の木は本当に生命力が強くてねぇ。鳥が紅い実を食べて、そのあと別の場所でフンをすると、中に混ざった種からまた新しい木が生えてくるんよ。うちの入り口にも何年か前に自然とすごい立派なのが生えたんやけど、ちょうどその年に良いことが続いてね。『ひょっとして南天のおかげかなぁ』ってお父さんとって話しとったわ」

…なんちゅうメルヘンなエピソードでしょうか。

そんな最強な植物を家のあちこちに飾ってくれて、ありがとう母さん。おかげで娘も救われました。

と言うわけで、「アトリエブルジョン」の隠れイメージカラーは紅です(ダレトク)。

ちなみに南天は仏語で Nandina(ナンディナ)、またの名を,“Bambou sacré, Bambou céleste, Bambou merveilleux(神聖な竹、天空の竹、驚くべき竹)” とも呼ぶそうです。

アトリエの名前が「Nandina(ナンディナ)」だとナン食べてるインディア人想像しちゃうし、「神聖な竹」だと規模大きすぎて「へ?」ってなるし、やっぱり個人的に「ぶるじょん」が一番しっくりくるのでした。

唯一の難点といえば、日本で名刺を渡すとき大抵「Bourgeons てなんて読むの?」と言われること。……そうですよね。発音しやすい云々の前に、読めないと意味ないですよね。これが灯台下暗し系女の正体です。ふりがな付きの名刺も作ったので、今度からは大丈夫でございます。

さーて!名前が決まれば、ロゴなんてするするっとイメージ湧いてサクサクっと完成するっしょ!と余裕をかましていた灯台下暗し系女がその後再びウンウン唸る事になるのは、また次回のお話で。

 

 

 

 

 

 

【おまけ①】

南天を自宅のあちこちに飾った粋な母による生け花作品集

【おまけ②】

滋賀県長浜市で毎年行われる「梅まつり」のうめ達(ブルジョンいっぱい編)

 

花も素敵、そして蕾も素敵。しみじみと。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。